藏春閣(喜翁閣)

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喜翁閣(大倉向島別邸「蔵春閣」)

■沿革

 喜翁閣は、大倉喜八郎の向島別邸内に、接客・宴会を主目的に建てられた建物で「蔵春閣」と呼ばれていた。向島別邸は、隅田川の堤に沿った桜並木をみることができる景勝の地に1879年(明治12年)に建設された。その地に増築される形で「蔵春閣」が建設されたものである。

 「蔵春閣」は大倉喜八郎自身が、片山東熊、妻木頼黄、伊東忠太といった建築家に相談したうえで構想を練り、大倉組(現大成建設)の技師であった今村吉之助と山中彦三の実施設計によって、4年の月日をかけてつくられた。

・1912年(明治45年)大倉喜八郎の向島別邸「蔵春閣」として完成。

設計:大倉組 今村吉之助(技師)、山中彦三(現場監督)

・1959年(昭和34年)朝日土地興業が購入し、船橋ヘルスセンター内に移築。

        中国料理店「長安殿」として使用。

・1978年(昭和53年)現在地に曳家移設。

三井ガーデンホテルの付属施設「喜翁閣」として使用。

・2006年(平成18年)閉鎖。

■建物概要

 建物は軒の高い総二階で、唐破風の入母屋屋根を持つ。1階は畳を敷いた書斎及び次の間と寄木張り床の食堂からなる。寄木張り床は桜、欅、槐などが用いられているが、現在は絨毯が敷かれている。食堂は二部屋に仕切って使用することもできる。内部装飾はすべて日本風であるが、12尺5寸の天井高や、吹き寄せの格天井にかけられたシャンデリアは明らかに洋風を感じさせる。

 2階は33畳敷きの広間と、幅1間半で長さ7間の広い廊下からなる。廊下の床には、隅田川にちなんで都鳥と桜花をモチーフにした、イタリア製大理石のモザイクが施されている。大理石の下には、鹿のなめし皮が10枚重ねに敷き込まれている。広間は桃山御殿のお成りの間を模してつくられており、正面には27尺の上段の間がとられている。広間は、広縁を客席とした場合の舞台として位置づけられていた。

 豪華さを余すところなく表現した建物のデザインは、桃山風あるいは日光東照宮の建物を思い起こさせる。大倉喜八郎好みの総決算ともいえる建物である。

・所在地 :千葉県船橋市浜町2丁目

・構  造:木造2階建て

・建築面積:254.50㎡

・延床面積:398.50㎡(1階:254.50㎡、2階:144.00㎡)

【参考文献】千葉県教育委員会:千葉県の近代和風建築 千葉県近代和風建築総合調査報告書,2004.3

★移築を前提とした解体が2013年に行われ、現在は大倉文化財団が所有しています。

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